昭和63年12月の税制改正では、居住者又は国内に恒久的施設を有する非居住者が、平成元年4月1日以後に株式等の譲渡をした場合には、源泉分離課税の適用を受けることを選択した掲合を除き、その株式等の譲渡による事業所得、譲渡所得及び雑所得については、他の所得と区分して、その年中の事業所得の金額、譲渡所得の金額及び雑所得の金額に対し、20%の税率により所得税(住民税については6%)を課税することとされました(租税特別措置法37条の10)。
なお、改正前においては、個人の有価証券の譲渡による所得については,原則として非課税とされ、例外として、 ①株式等の継続的取引から生ずる所得、②同一銘柄の株式等を相当数譲渡したことによる所得、③ 事業等の譲渡に類似する株式等の譲渡による所得、その他の特定の所得が課税の対象とされるにとどまっていました。
(注) 改正前において、個人の有価証券の譲渡による所得のうち課税の対象とされていたものは次のとおりです(旧所法9①十一,旧措法37の10①)。
① 株式等の継続的取引から生ずる所得(年30回以上.かつ. 12万株以上の取引から生ずる所得)
② 「先物取引」による所得
③ 株式等の買集めによる所得(相当数買い集めた同一銘柄の株式等を,その所有者である地位を利用してその発行法人に対し売却することによる所得)
④ 特別報告銘柄株式を指定期問中に相当数売買したことによる所得(証券取引所が指定した特別報告銘柄株式を,その指定期間中に12万株以上売買したことによる所得でその年の指定期間内の売買に係るもの)
⑤ 同一銘柄の株式等を相当数蹟渡したことによる所得(同一銘柄の株式等を年間12万株以上譲渡したことによる所得)
⑥ 事業等の譲渡に類似する株式等の譲渡による所得
⑦ 株式形態等によるゴルフ会員権の譲渡による所得
⑧ 国外で発行される割引債を国内において譲渡したことによる所得
⑨ 利付公社債で割引公社債に類するもの(利子の計算期間が1年を超える公社債等を含みます。)を国内において譲渡したことによる所得
⑩ 割引の方法により発行される短期国債(政府短期証券を含みます。)の譲渡による所得
このように有価証券譲渡益を原則として非課税とする制度については、税負担の公平の観点から問題とされ、税制調査会において、累次にわたり段階的課税強化を図るべき旨が答申され( 昭和52年10月「今後の税制のあり方についての答申」、昭和55年11月「財政体買を改替するために税制上とるべき方策についての答申」、昭和58年11月「今後の税制のあり方についての答申」等)、これらを踏まえ、有価証券譲渡益について課税ペース(課税の対象範囲)の拡大が図られてきました。
さらに,昭和61年10月の「税制の抜本的見直しについての答申」では, 有価証券譲渡益について, 「公平、公正の理念に照らし、また、利子・配当課税との権衡、さらには有価証券市場に与える影響等を考慮しつつ、例えば年問の大量取引に係る所得を課税対象とする等段階的課税強化を一層推進することにより課税ペースの拡大を図り、究極的には原則課税を志向すべきであると考える。」と提言され、昭和62年9月の税制改正において、継続的取引の要件についての見証しを行うこと等により課税ベースの拡大が図られました。
(国税庁「昭和63年 改正税法のすべて」321頁以下参照)
参考資料(ダウンロード可)
昭和63年有価証券分離課税 所得税法等の一部を改正する法律案要綱.pdf
租税特別措置法施行規則の一部を改正する省令案(昭和63年12月改正)を定めるための決裁文書(株式等に係る譲渡所得等の申告分離課税制度の創設(租税特別措置法第37条の10).pdf