令和6年10月に国税庁で行われた全国国税局調査査察部長(次長・監理官)会議資料 の内容を抜粋してご紹介します。
リスク・ベース・アプローチに基づく事務運営の推進
調査部は、所管する大法人の税務コンプライアンスの維持・向上に努めることを通じて、税務行政全体における適正・公平な課税の実現を図ることをその使命としており、この使命を果たすため、リスク・ベース・アプローチに基づき、実地調査による複雑・困難事案への的確な対応と、大法人と協働関係を築いた上で自発的な税務コンプライアンスの維持・向上に導く協力的手法を、効果的に組み合わせて所管法人全体を適切に監理し、大法人の税務コンプライアンスの維持・向上に努めている。
1 評価指標に基づく調査事務等の取組方針
調査に当たっては、税務リスクが高い事案に取り組むことはもとより、調査部の役割を踏まえ重点的に取り組むべき分野へ優先的に事務量が配分されるよう促していく必要がある。
そのため、新たな評価指標を策定し、調査部職員に当該分野への積極的な取組・事務量配分を促すとともに、部次長・統括官等の幹部職員が当該分野への取組状況を適時・適切に把握・確認し、その評価・検証結果を各局の事務運営に反映させていくこととしている。
また、庁局間においても、新たな評価指標を軸として意見交換・情報共有することにより、事務運営の評価・検証・改善を行うこととしている。
(意見交換事項)
調査部の役割を踏まえた重点的に取り組むべき分野へ積極的に取り組んでいくため、評価指標の運用方針及び取組指標を踏まえた調査事務に係る取組方針等について意見交換を行う。
2 税務に関するコーポレートガバナンスの充実に向けた取組
大法人の税務コンプライアンスの維持・向上のためには、税務に関するコーポレートガバナンス(以下「税務CG」という。)を充実させていくことが重要かつ効果的であり、特別国税調査官所掌法人を対象にその充実を促すことに取り組んでいるところ、同取組をより一層効果的に機能させる観点から、今後の取組の方向性等について検討していく必要がある。
(意見交換事項)
税務CGの充実に向けた取組の有効な効果検証方法について意見交換を行う。
調査部事務におけるDXの推進
令和5事務年度に策定された「データ活用推進第三次中期計画」においては、今事務年度からの3年間を国税当局におけるデータ活用の「発展期」と位置付けており、これまで以上に事務運営等にデータ活用を「実装」させていく必要がある。
その中で、調査課においては、リスク・ベース・アプローチに基づく事務運営を基本方針として、従来の調査手法を改善し、より効率的かつ精度の高い調査の実現(新たな価値の創造)を目指してきたところであり、その実現に当たってはアジャイルなデータ分析とフィードバックによる改善、庁局間における取組の情報共有のほか、最新のデジタル技術の活用が重要となる。
そのため、法人情報管理統合システムを基盤とした全国一体的な調査事務運営に当たり、継続的に当システムの利便性や精度の向上に向けて分析・検討を進めるとともに、ガバメントソリューションサービス(GSS)等導入後を見据えたアプリケーションや調査事務等における生成AIの利活用に向けた検討も進め、より一層データ活用を「実装」させていく必要がある。
中期的な観点による情報収集
産業・経済の成長領域において、各種の課税上の問題・課題が顕在化・拡大する前に、これを的確に捕捉・分析の上、迅速に対応を検討・判断できるよう、より前広な情報収集・分析機能の強化、収集情報の組織的な共有・対応を行うことが必要不可欠である。
また、調査課は、業界・地域を代表、リードする大法人を所管しており、調査等を通じて培った先端取引に関する専門的知識、業種ノウハウ及び情報を国税組織全体に還元することが役割として求められている。
これらを踏まえ、将来的な課税リスクを見据えた中期的な観点による情報収集に取り組んでいく必要がある。
(意見交換事項)
新たな取組や特に専門的知識を要する取組の状況について局間の情報共有を図るため、次の事項について意見交換を行う。
・ 情報企画事案への取組状況
・ 「租税回避」に係る取組状況
国際課税における課題への対応
1 国際課税の充実
国際課税を取り巻く環境変化に対して効果的かつ効率的に対処し、国際課税分野を含む調査部全体のパフォーマンスの最大化を図ることを目的として、東京局、大阪局、名古屋局及び関東信越局の国際課税に係る機構を令和2事務年度に再編した。
再編後は、国内・国際一体的な観点から法人の全体的なリスクを把握した上で調査事務量を適切に配分することとしている。
(意見交換事項)
再編後一定の期間が経過したことを踏まえ、今事務年度の国際課税分野に係る円滑な事務運営について庁局の意思統一を図るため、次の事項について意見交換を行う。
・ 体制再編後の国際専担部署における事務運営の評価
・ 国内・国際一体調査をはじめとした体制再編後の各種取組から把握されている検討課題への現在及び今後の対応
・ 今事務年度の国際課税分野に係る事務運営の取組方針
2 国際課税における新たな制度への対応
経済のグローバル化・デジタル化に伴うビジネス形態の変化が進む中で、経済実態を反映した国際課税制度の見直しが議論され、令和3年10 月、OECD及びG20BEPS包摂的枠組み(IF:Inclusive Framework)で二本の柱について合意が取りまとめられた。
イ 第1の柱(利益A/利益B)
第1の柱のうち、利益Aは、新たな多数国間条約の締結により、グローバル企業グループが物理的拠点(いわゆるPE)なしに活動する市場国に対しても新たに課税権を配分する制度である。全世界売上が200 億ユーロ超かつ利益率が10%超のグローバル企業グループを対象としている。この多数国間条約については、後述する利益Bを含む第1の柱に関する最終パッケージの交渉を迅速に妥結した上で可能な限り早期に最終化及び署名開放し、令和7年中の発効を目指すこととされている。
また、利益Bは、「基礎的マーケティング・販売活動」について、移転価格税制の適用の簡素化・合理化することを目的とした仕組みとされており、合意された利益Bガイダンスに基づき、令和6年2月にOECD移転価格ガイドラインが改定・公表された。これにより、利益Bの適用を選択した国は、令和7年1月以降に開始する事業年度における自国内の適用対象取引に対して、利益Bを適用できることとされている。
今後は、第1の柱に関して、国際的な議論に引き続き参加するとともに、国際的な合意等を踏まえて、執行の観点から検討を進め、適切に対応していく。
ロ 第2の柱
第2の柱であるグローバル・ミニマム課税は、年間総収入金額が7億5千万ユーロ以上の多国籍企業を対象として、国際的に合意された最低税率(15%)を下回る国における最低税率までの課税を確保する制度である。
そのうち、所得合算ルールに係る法制化として創設された各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税については、令和6年4月1日以後に開始する対象会計年度から適用されている(制度創設後も数か月に一度執行ガイダンスが発出され、追加の税制改正等も見込まれる。)。本制度に対応するため、法令解釈通達、Q&A等を公表するとともに、専門的な知識を習得するための職員向け研修を実施してきたところ。令和6年4月の本制度の施行後は、庁局で連携し、外部からの質疑に的確に対応しており、今後も、積極的な制度の周知・広報等を進めるとともに、追加の改正等も踏まえて、適切に対応していく。
デジタルインボイス普及に向けた周知広報
「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション-税務行政の将来像2023-」(令和5年6月公表)において、新たな取組の柱として追加した「事業者のデジタル化促進」に向けて、庁局署一体となって周知広報に取り組んでいるところである。
なお、事業者へのアプローチに当たっては、事業規模によってデジタル化の進度等も異なることから、事業者をデジタル化の進度によりセグメント化した上で、各種施策に取り組むこととする。
取組事項の検証・評価及び今後の取組方針
令和6年度第2四半期までの査察事績
令和6年度第2四半期(4月から9月)までに査察調査に着手した件数は55 件である。
また、9月までに調査着手した査察事案について、処理(検察庁への告発の可否を判断)した件数は54 件、そのうち検察庁に告発した件数は27 件であり、告発率は50.0%となっている。
【着手・処理・告発件数、告発率の推移】
【脱税額の推移】
令和6年度における査察部門の事務運営の基本方針
1 基本的考え方
査察制度は、悪質な脱税者に対して刑事責任を追及し、その一罰百戒の効果を通じて適正・公平な課税の実現と申告納税制度の維持に資することを目的としている。
この目的を達成するため、査察を取り巻く環境が変化する中にあっても、社会的に非難されるべき悪質な脱税を的確に摘発し検察官に告発できるよう、情報事務と調査事務を通じて、組織力を発揮した効果的・効率的な事務運営に努めるとともに、重点事案(注)の積極的な立件・処理に取り組む。
(注)重点事案とは、消費税事案、無申告事案、国際事案及びその他社会的波及効果が高いと見込まれる事案をいう(3 重点事案)
3 重点事案
令和6年度においては、査察制度の目的に鑑み、以下の事案の積極的な立件・処理に取り組むこととする。
⑴ 消費税事案
消費税に対する国民の関心が極めて高いことを踏まえ、消費税事案について積極的に取り組む。受還付犯については、いわば国庫金の詐取ともいえる悪質性の高い行為であり、牽制効果を十分に発揮させる必要があることから、特に積極的に取り組む。
⑵ 無申告事案
無申告による税のほ脱は、申告納税制度の根幹を揺るがす行為であることを踏まえ、無申告事案について、積極的に取り組む。
⑶ 国際事案
国境を越えた経済・金融取引の活発化に伴い、海外取引を利用した悪質・巧妙な不正行為が見受けられることを踏まえ、国際事案について、租税条約等に基づく情報交換制度等を活用して積極的に取り組む。
⑷ 上記以外で社会的波及効果が高いと見込まれる事案
上記以外で、時流に即した新たな業種・業態に関連する事案や特定の業界内での波及効果が極めて高い事案など、世間の耳目をひき牽制効果が期待できる事案について、積極的に取り組む。
査察事務におけるデジタル化の取組推進
国税庁全体の方針を踏まえつつ、査察においても、GSSやKSK2の導入を見据え、デジタル技術を活用したDX・BPRに取り組み、事務の効率化・高度化を図ることとしている。
そこで、査察事務におけるデジタル化の取組推進について説明する。
査察事務の当面の課題と対応
調査事務における法改正への対応について説明する。
1 インボイス制度下における査察部門の対応
令和5年10 月から開始されたインボイス制度について、査察部門の対応を説明する。
2 簿外経費の損金不算入規定
令和5年1月に施行された簿外経費の損金不算入規定について、査察部門の対応を説明する。
3 保全差押えの解除期限の延長
令和7年1月より施行される改正国税徴収法による保全差押えの解除期限の延長について、査察部門の対応を説明する。
KSK2・GSSの導入について
1 GSS(ガバメントソリューションサービス)について
GSS(ガバメントソリューションサービス)は、行政機関の業務用端末やネットワーク環境などの業務実施環境を、政府共通の標準的な環境としてデジタル庁が提供するサービスである。国税庁においては、令和7年7月以降、順次GSS環境へ移行し、令和8年6月に全国運用を開始した後、令和8年9月からはKSK2の運用を開始する予定である。
このため、利便性とセキュリティ確保のバランスを踏まえた上で、引き続き、GSS導入に向けた取組を全庁的に進めていく必要がある。
2 KSK2について
KSK2の開発状況
KSK2の開発は、現在、プログラムの作成やメーカーによるテストを進めている段階であり、おおむね順調に進捗している。令和7年3月には、機器も設置し、その後は、プログラム、ハードウェア、ネットワーク、利用者端末などを組み合わせ、本番とほぼ同じ環境で動作を確認する「総合運用テスト」工程に入っていく。
KSK2導入に向けた取組
KSK2は、国税の賦課・徴収の基盤となる「基幹システム」であり、導入の成否によっては、職員の職務遂行のみならず、納税者の申告・納税義務の履行に多大な影響を及ぼすおそれがある。
そのため、KSK2の円滑な導入に向けて、開発作業のみならず、「データ移行」・「外部接続先との連携」といった、全庁的な課題については、全庁的な理解の下、各課の役割分担をしっかりと定め、検討を進めていく必要がある。
なお、事務処理手順の確認を目的として、令和7年10 月から令和8年3月の間、4拠点の業務センター(東京局大手町分室、大阪局大手前分室、金沢局業務センター、福岡局春日分室)において「テスト運用」を実施する予定である。さらに、職員の習熟度の向上を目的として、令和8年4月以降順次、全職員(非常勤職員を含む)を対象とした「研修」を実施する予定である。
内部事務のセンター化
1 内部事務のセンター化の取組
「内部事務のセンター化(以下「センター化」という。)」は、内部事務について、事務系統横断的な事務処理体制を整備し、署窓口から分離して専担化した組織(業務センター)で、事務と人を集約して処理することで、事務の正確性の確保とともに、事務の効率化を目指すものである。効率化により確保できた事務量については、実地調査や徴収のほか、行政指導やデータ分析など、環境変化に適切に対応するための事務量に充てることとしている。
令和8事務年度には、すべての税務署がセンター化の対象になるとともに、KSK2の導入が予定されており、各種事務処理が、全面的にシステムでのデータ処理に移行することとなるが、その基盤となる、申告書等の情報の「データ化」や、修正申告や納税地の異動などがあった場合の「データ更新」などは、業務センターがその主体となる。このように、センター化は、国税組織の事務運営をデジタル時代に相応しいものへと転換する上で基盤となる取組でもあり、着実に推進していく必要がある。
2 令和6事務年度の取組方針
⑴ KSK2を活用した事務運営・事務処理体制の検討
KSK2の機能を踏まえた事務運営や事務処理体制について検討を進めるとともに、庁局が連携して効率的で正確な事務処理を行うための「業務マニュアル」の策定を推進する。
⑵ センターの安定的な運営とBPRの推進
センターの安定的な運営を実現するため、センターの設置面積不足や非常勤職員の育成といった全署実施に向けた諸課題に対応するとともに、事務の簡素化・標準化といったBPRの推進を継続する。
⑶ 行政指導の充実
行政指導事務について、効果的・効率的な事務処理体制等の整備を進めるなど、より一層の充実を図るとともに、KSK2の導入を見据え、各種機能や接触事績などのデータを効果的に活用する方策を検討する。
⑷ KSK2の導入に向けた準備
KSK2を円滑に導入するため、職員研修やテスト運用の準備を進めるとともに、KSK2を補完するRPAやOAシステムの開発についても検討を進める。
国際分野における最近の動向
1 国際会議等を通じた積極的な知見の共有等
⑴ OECD税務長官会議(FTA:Forum on Tax Administration)
FTAは、税務行政上の課題について、知見の共有や意見交換等を行うため、OECD租税委員会の下に設置された税務当局の長官級フォーラムであり、現在OECD加盟38 か国及び非加盟15 か国・地域が参加している。
令和5年10 月には、FTAの全参加国の長官クラスで知見の共有等を行うために令和元年以降毎年開催されているFTAの本会合がシンガポールで開催され、43 か国・地域の長官クラスが参加し、税務行政のデジタルトランスフォーメーションや2つの柱の解決策の実施と税の安定性、税に関するキャパシティビルディング等について意見交換が行われた。
次回は、令和6年11 月にギリシャ(アテネ)で開催予定。
⑵ アジア税務長官会合(SGATAR:Study Group on Asia-Pacific Tax Administration and Research)SGATARは、アジア太平洋地域における税務行政上の課題について、国際協力及び意見交換等を行うための会合であり、現在18 か国・地域が参加している。
令和5年10 月末から11 月頭には、第52 回SGATAR年次会合がタイで開催され、各国・地域の長官クラス(18 か国・地域)が参加した。長官会合では、各国・地域の長官等が、「『第2の柱』の執行」や「税務コンプライアンスにおけるデータ分析」、「デジタル経済における間接税(GST/VAT)」について議論を行った。また、実務者クラスの分科会では、「移転価格(無形資産の評価)」、「タックスペイヤージャーニーのデジタル化」及び「国別報告書(CbCR: Country by Country Report)の実施と情報の効果的活用」の3つのテーマに関する議論が行われた。
次回は、令和6年10 月に韓国(ソウル)で開催予定。
⑶ 税の透明性と情報交換に関するグローバル・フォーラム(GF:Global Forum on Transparency and Exchange of Information for Tax Purposes)
GFは、OECDにより設置された、税務目的の情報交換の促進や開発途上国向け技術協力等に取り組むフォーラムであり、OECD非加盟国を含む171 か国・地域が加盟し、各国の「要請に基づく情報交換」及び共通報告基準(CRS:Common Reporting Standard)に基づく非居住者金融口座情報(いわゆる「CRS情報」)の「自動的情報交換」の法制・執行両面の相互審査を実施している。
令和5年11 月の年次総会では、相互審査の進展状況と今後の予定、令和7年以降に開始される新たな相互審査制度の枠組み、開発途上国支援の状況と方向性、暗号資産等取引情報報告制度(CARF:Crypto-Asset Reporting Framework)導入に向けた対応を討議・合意したほか、作業部会の成果物承認及び方向性確認が行われた。
次回年次総会は、令和6年11 月にパラグアイ(アスンシオン)で開催予定。
⑷ アジア・イニシアティブ会合
アジア・イニシアティブは、アジア地域における税務当局間の情報交換等促進を目的として、GFにより令和3年11 月に立ち上げられた枠組みであり、現在、アジア地域の17 か国・地域及びオブザーバー(ADB・世銀等5機関)が参加している。
令和6年6月の第6回会合では、年次報告書が発表され、当該報告書に基づくアジア地域の税の透明性の進捗状況についてパネル討議を実施。更なる情報交換の促進及びキャパシティビルディングの実施継続の必要性が確認された。また、令和7年までの活動計画が承認されたほか、実質的支配者情報の透明性確保、間接税(GST/VAT)目的の情報交換に関する課題への対処、CRS情報の効果的活用、情報交換が歳入に与える影響の効果測定の重要性等について議論が行われた。
次回会合は、上記GF年次総会(令和6年11 月、パラグアイ(アスンシオン))に併せて開催予定。
2 外国税務当局との執行協力の拡充
⑴ 情報交換の状況
我が国は、租税条約等に基づき、多数の国・地域の税務当局と租税の賦課徴収に関連する情報を交換しており、令和4事務年度には、個別事案の情報交換(約900 件)やCRS情報の交換(約305 万件)含め約390 万件の情報の交換を行った。
なお、令和6年7月末時点で、我が国を含む58 の国・地域がCARFの導入及び令和9年の交換開始に向けて取り組む旨の声明を発表しており、我が国も、令和9年以降に報告・交換を実施するべく、令和6年3月に改正法を、同年6月に改正令及び改正省令をそれぞれ公布済みである。
⑵ 徴収共助の状況
徴収共助とは、税務当局にとっては自国の領域外では公権力を行使できないという制約がある中、租税条約等に基づいて各国の税務当局が協力してお互いに相手国の債権を徴収するという仕組みである。我が国は、多数の国・地域との間で徴収共助が可能となっており、積極的かつ効果的に制度を活用している。
3 相互協議事案の適切・迅速な解決
相互協議については、近年、発生件数が増加傾向にあり、それに伴って繰越件数も増加傾向にある。繰越件数のうち7~8割程度が事前確認に係る事案となっており、引き続き、国税局の審査部局と緊密に連携しつつ、処理促進に取り組んでいくこととしている。
繰越件数の増加に伴い、OECD非加盟国・地域の繰越件数も増加傾向にあり、相互協議事案全体の4~5割程度となっている。このため、相互協議事案の適切・迅速な解決に向け、各国税務当局との連携を密にし、相互協議の円滑な実施を図るとともに、FTAの下に設置されたOECD相互協議フォーラム(MAPF:MAP Forum)に参加するなどの取組を行っている。
4 開発途上国に対する技術協力等の推進
開発途上国に対する技術協力については、政府開発援助の枠組み等の下、開発途上国の税務行政の改善、日本の税務行政に対する理解者の育成等を目的として、独立行政法人国際協力機構(JICA)等と連携し、引き続き積極的に取り組んでいく。
また、当該技術協力を国内で実施する場合には、国税局・税務署等の現場視察の要望が多く、こうした要望にも局署の協力を得ながら、積極的に対応することとしている。
国税不服審判所の現状
審査請求の状況