税理士試験の院免(税法免除)を狙うとき、最初に悩むのが「研究テーマをどう選ぶか」です。テーマ選びは合否を左右する最重要ポイント。この記事では、大学院教員の視点から失敗しない研究テーマの選び方を徹底解説します。

研究テーマ選びで合否が決まる3つの理由

①入試で審査される

研究計画書の質は大学院入試の中核。テーマが明確で研究可能性があるか審査されます。

②修士論文の完成度に直結

入学後の2年間、このテーマで研究します。最初の選択が重要です。入学後にテーマを変更することが認められる場合もあります。指導教授に相談しましょう。

③免除申請の審査に影響

修士論文が「税法に属する科目」に該当するか、国税審議会が審査します。テーマが適切でないと免除が得られません。

免除認定の審査基準(国税審議会)

国税審議会の認定基準(国税庁公表)では、以下の条件を審査したうえで総合的に判断することとされています。満たしていない場合は不認定となります(実際に一定数が不認定となっています)。詳細は『国税庁ホームページ(記事末尾のリンク参照)』でご確認ください。

条件内容ポイント
①税法該当性修士論文が「税法に属する科目」に関するものであること所得税法・法人税法・消費税法・相続税法など
②単位修得申請に係る科目を内容とする単位を4単位以上修得していること(学位論文の作成指導に係る演習は除く)税法科目の授業で4単位以上必要(演習(ゼミ)単位は不可)
③一部科目合格申請分野の試験科目のうち1科目について満点の60%以上の成績(一部科目合格)を得ていること所得税法・法人税法・相続税法・消費税法など税法科目の1科目合格が必要

研究テーマを選ぶ7つのアプローチ

① 実務経験から問題意識を探す

税理士試験を目指す方の多くは、税理士事務所や一般企業の経理部門で実務経験があります。日々の業務で「この規定、おかしくないか?」「この解釈でいいのか?」と感じた疑問が研究テーマになります。

例:フリーランスの経費認定の曖昧さ → 「事業所得における必要経費の範囲に関する一考察」

② 税法の改正動向に注目する

毎年行われる税制改正は、研究テーマの宝庫です。改正の背景・目的・問題点を深掘りすることで、アカデミックな研究になります。

例:インボイス制度の導入 → 「適格請求書等保存方式導入の問題点と改善策」

③ 判例・裁決事例から発展させる

最高裁や国税不服審判所の重要判例・裁決は、税法の解釈を巡る最前線です。「この判決は正しいのか」「別の解釈はないか」という問いが研究になります。

例:ヤフー事件(法人税法132条の2)→「組織再編税制における否認規定の射程と限界」

④ 外国法との比較研究

日本の税制を諸外国(米国・ドイツ・英国等)と比較することで、独自の研究視点が生まれます。大学院教員に外国法の専門家がいる場合は特に有効です。

例:「日米における株式報酬税制の比較研究」

⑤ 新興分野・デジタル経済を扱う

暗号資産・NFT・プラットフォームビジネス・AIなど、既存税法の枠組みでは対応しきれない新領域は研究テーマとして注目度が高く、先行研究も少ないため独自性を出しやすいです。

例:「暗号資産の所得区分と課税タイミングに関する検討」

⑥ 特定の納税者層に焦点を当てる

中小企業・農業・医療・非営利など、特定の納税者層が直面する税務上の課題を研究テーマにする方法です。実務経験と組み合わせると説得力が増します。

例:「中小企業における事業承継税制の活用と問題点」

⑦ 指導教員の専門分野・教員陣を確認する

指導教員の専門分野と「遥かに離れた」テーマを選ぶと、適切な指導を受けられず論文の完成度が下がります。ただし、大学院によっては指導教員が複数いる場合もあります。また、研究対象範囲が広い教員もいるため、必ずしも「特定の指導教員の研究テーマと完全に一致」する必要はありません。

ポイント:志望大学院の教員の著書・論文、所属する指導教員の数や研究テーマを必ず確認しましょう。大学院によっては、過去に修了した院生の修論テーマを公表しているところもあるので、きちんと下調べしましょう。

税法分野別・研究テーマ例一覧

税法分野研究テーマ例特徴
所得税法給与所得控除の合理性、副業時代の所得税制、損益通算の制限判例・裁決が豊富
法人税法益金・損金の認識基準、組織再編税制、交際費課税企業実務と直結
消費税法インボイス制度の問題点、仕入税額控除の制限、電子商取引改正動向が活発
相続税・贈与税事業承継税制、小規模宅地等の特例、生前贈与の加算期間実務ニーズが高い
国際税務移転価格税制、BEPS対応、デジタル経済への課税先進的・将来性あり
租税手続法更正の請求の範囲、税務調査の適正手続、納税者の権利納税者保護の観点

【注意】上記は比較的院生から人気の高いテーマですが、同じ指導教員の下で複数の学生(修了生も含む)のテーマがかぶっている場合には、研究の視点や切り口を変えるなどの調整が必要になることが通常です。

失敗しやすい研究テーマ4パターン

❌ パターン①:広すぎるテーマ

「日本の税制の問題点」など、テーマが漠然と広すぎると研究の焦点が定まらず、修士論文として成立しません。

✅ 「所得税法における○○の問題」に絞る

❌ パターン②:先行研究がなさすぎる

あまりにもニッチなテーマは、参照できる先行研究が少なく、論文として書ける分量が確保できません。

✅ CiNiiで先行研究が5件以上あるか確認する

❌ パターン③:税法ではなく会計・経営のテーマ

「企業価値評価」「管理会計」など会計・経営系のテーマは、税法免除の対象外になる可能性があります。

✅ タイトルに税法の条文・概念を含める

❌ パターン④:指導教員が対応できないテーマ

志望大学院に専門の指導教員がいないテーマを選ぶと、適切な指導が受けられず、論文の完成度が下がります。複数の教員がいる大学院でも、いずれかの教員が該当テーマに対応できるか事前に確認することが重要です。

✅ 事前に担当教員・指導教員の専門分野を必ず確認する

研究テーマ決定チェックリスト

✅ テーマ決定前に確認すること

  • □ テーマは「税法に属する科目」に明確に該当するか
  • □ 先行研究(論文・書籍)が5件以上存在するか(CiNii・国立国会図書館で検索)
  • □ 自分の問題意識・疑問が明確に言語化できるか
  • □ 志望大学院に専門の指導教員がいるか
  • □ 修士論文(少なくとも2万〜4万字程度)として書ける分量があるか
  • □ テーマについて「なぜ研究するのか」を30秒で説明できるか

よくある質問(FAQ)

Q. 入試前に研究テーマを確定させる必要はありますか?

A. 研究計画書に記載する必要があるため、入試前にある程度固める必要があります。ただし、テーマは入学後も変更が認められる場合があります。まずは仮のテーマで研究計画書を作成し、入学後に指導教員と相談しながらブラッシュアップするのが現実的です。

Q. 自分が受験勉強してきた科目(例:法人税法)のテーマを選ぶべきですか?

A. 有利です。学習してきた科目の基礎知識があると、先行研究の理解が早く、論文を書く際のハードルが低くなります。ただし「自分が詳しいから」だけでなく「研究したい問題意識があるか」も重視してください。

Q. 税法免除に有利なテーマ・不利なテーマはありますか?

A. 「税法に属する科目」として明確に認定されやすいのは、所得税法・法人税法・消費税法・相続税法・国税通則法等を直接扱うテーマです。経済学・会計学・経営学的アプローチが強いテーマは、税法該当性が問われる場合があります。また、国税庁Q&A(問20)では「租税についての経済分析や政策研究」は、税法に属する科目等に関する研究として認定されない場合があることが示されています。経済学・財政学的なアプローチが中心の場合は特に注意が必要です。指導教員に事前確認することをお勧めします。

東洋大学大学院でのテーマ相談について

東洋大学大学院法学研究科(公法学・政治学専攻)では、所得税法・法人税法・消費税法・相続税法・国際税務・暗号資産税務など、幅広い分野の研究テーマを指導できる租税法教員が、研究テーマの相談から修士論文の完成まで丁寧にサポートします。

東洋大学大学院に進学したいが、自分の研究テーマでも指導してもらえるか、院免が取れるか不安な方も、まずはお気軽にご相談ください。