大学院による税理士試験の税法科目免除(院免)を目指すには、研究計画書の作成が最初の関門です。研究計画書は大学院の入試審査で最重視される書類であり、合否を大きく左右します。本記事では、税法免除を狙う社会人・受験生向けに、研究計画書の書き方を徹底解説します。
研究計画書とは?大学院入試における役割
研究計画書(Research Proposal)とは、大学院入試において「自分が大学院でどのような研究をするか」を示す書類です。税法免除を目的とした大学院受験では、税法に関連するテーマであることが審査の前提となります。志望理由書や学力試験と並ぶ重要書類であり、多くの大学院で選考の中核に位置付けられています。
研究計画書の基本構成
大学院によって書式は異なりますが、研究計画書に盛り込むべき内容は概ね共通しています。以下の構成を参考にして作成しましょう。
| 項目 | 内容のポイント | 目安の分量 |
|---|---|---|
| ① 研究テーマ | 具体的で税法に関連するテーマを明示 | 1〜2文 |
| ② 研究の背景・動機 | なぜこのテーマを選んだか、社会的意義は何か | 200〜400字 |
| ③ 先行研究の整理 | 既存研究を踏まえた上で、未解決の問題点を示す | 200〜400字 |
| ④ 研究目的・問いの設定 | 「何を明らかにするか」を明確に | 100〜200字 |
| ⑤ 研究方法 | 文献調査・判例研究・比較法研究など具体的に | 150〜300字 |
| ⑥ 研究の意義・期待される成果 | 理論的・実務的な意義を説明 | 150〜300字 |
| ⑦ スケジュール | 1年次・2年次の研究計画を時系列で示す | 箇条書き |
各項目の書き方:具体的なポイント
① 研究テーマの決め方
📌 ポイント:研究テーマは「税法に関連するもの」でなければ免除の対象になりません。法人税法・所得税法・消費税法・相続税法・租税特別措置法などから選びましょう。「〇〇に関する研究」という抽象的な表現より、「〇〇の問題点と解決策に関する考察」のように具体的に示すことが重要です。
テーマ選びで迷ったときは、自分の実務経験や関心と結びつけると説得力が増します。例えば、税理士事務所勤務なら「〇〇の申告実務における課題」、経理担当なら「〇〇税の会計処理に関する考察」などが自然なテーマになります。
② 研究の背景・動機の書き方
なぜこのテーマに関心を持ったのかを、客観的な社会的背景と自分の個人的な動機の両面から書くと説得力が高まります。
✅ 良い書き方の例
「近年のデジタル経済の進展により、〇〇税の課税上の問題が顕在化している。実務においてもXXの点で困難が生じており、従来の規定の解釈の精緻化や立法論的な検討が必要とされる」
❌ 避けるべき書き方
「税理士試験の勉強が大変なので、院免を使いたいと思った」「大学院に進学して税理士になりたいから」など、免除取得のためという本音を前面に出す書き方
③ 先行研究の整理
先行研究の整理は「自分が研究すべき余地があること」を示すために必要です。参考にすべき資料は以下の通りです。
- 学術論文:CiNii(国立情報学研究所)、J-STAGEで「租税法」「税法」のキーワードで検索
- 判例:最高裁判所の租税判例、裁決事例(国税不服審判所のWebサイトや当サイトのブログ)
- 国会答弁・パブリックコメント:e-Gov、財務省・国税庁のWebサイト
- 書籍:租税法の基本書(金子宏『租税法』等)や各税目の専門書
④ 研究目的・問いの設定
⚠️ 重要:研究目的は「〇〇を明らかにする」「〇〇の問題点を解明し、解決策を提示する」など、具体的な問い(リサーチクエスチョン)の形で示すことが鉄則です。「〇〇について研究する」という漠然とした書き方では審査委員に「何をしたいのかわからない」と評価されてしまいます。
⑤ 研究方法の書き方
法学系大学院では主に以下の研究方法が用いられます。自分のテーマに合った方法を選び、具体的にどのように進めるかを記述しましょう。
📚 文献調査法
学術論文・書籍・判例・税務通達などを体系的に収集・分析する。法学研究で最も一般的な手法。
⚖️ 判例研究法
最高裁・高裁・地裁の判決・決定を分析し、法解釈の論拠や問題点を明らかにする。
🌏 比較法研究法
外国(米国・ドイツ・フランス等)の税法制度と日本の制度を比較し、立法論的示唆を導く。
⑥ 研究スケジュールの立て方
標準的な2年間の修士課程を想定したスケジュール例です。
- 1年次前期:先行研究の収集・整理、指導教員との研究方向の確定、関連科目の受講
- 1年次後期:文献・判例の精読、論点の洗い出し、中間発表に向けた準備
- 2年次前期:論文の骨格作成、各章の草稿執筆、指導教員への定期報告
- 2年次後期:論文の完成・修正、最終審査(口頭試問)の準備・受験
審査で高評価を得るための5つのポイント
- テーマの具体性:「消費税法における○○問題」など、具体的なテーマを設定する
- 独自性・新規性:既存研究との差別化ポイントを明示する
- 実現可能性:2年間で完結できるスコープに絞り込む
- 論理的な構成:背景→問い→方法→期待される成果の流れを明確に
- 指導可能なテーマとの整合性:志望する指導教員の研究テーマや修了生の修論テーマを参考に
よくある失敗パターンとその対策
❌ よくある失敗①:テーマが広すぎる
「日本の税制について研究する」のような広大なテーマは、2年間で修士論文として完成させることが現実的ではありません。
対策:「〇〇税法の△△に関する問題」のように、一つの論点に絞り込みましょう。
❌ よくある失敗②:先行研究を無視している
「この分野はまだ誰も研究していない」という主張は、多くの場合単なる調査不足です。また、この分野の研究をするなら必ず読むべき先行研究が記載されていない研究計画書をよく見かけます。
対策:CiNii・J-STAGEで事前にしっかり検索し、既存研究の動向を把握した上でテーマを設定しましょう。間違っても「ネットでダウンロードできる資料しか収集しない・読まない」というようなアプローチをとってはいけません。
❌ よくある失敗③:免除取得目的が前面に出ている
「院免のために入学したい」という動機は本音ですが、研究計画書では学術的な研究への意欲を前面に出すことが求められます。
対策:「〇〇の問題を解明し、実務・立法に貢献したい」という姿勢で書きましょう。
よくある質問(FAQ)
Q1. 研究計画書は何文字くらい書けばよいですか?
大学院によって指定書式が異なります。一般的にはA4用紙1〜2枚(800〜2000字程度)が多いですが、大学院の募集要項を必ず確認してください。指定がない場合はA4・1枚半(約1200〜1500字)を目安にしましょう。
Q2. 税法の知識がなくても研究計画書は書けますか?
基礎的な税法知識は必要ですが、高度な専門知識がなくても書けます。重要なのは「問題意識の明確さ」と「研究への意欲」です。ただし、志望する大学院の入試では税法の口頭試問があることも多いため、基本的な学習は欠かせません。
Q3. 働きながら大学院入試の準備はできますか?
可能です。社会人入試(社会人選抜)を設けている大学院が多く、研究計画書・面接・小論文が中心で、筆記試験の負担が軽い場合があります。早めに志望大学院の入試情報を確認し、半年〜1年前から準備を始めるのが理想的です。
Q4. 指導教員は入試前に決まりますか?
入試前に指導予定教員に事前相談(コンタクト)することを推奨している大学院もあります。研究計画書の内容が志望教員の専門と合致しているかを確認するためにも、大学院の教員一覧を見て、メールや大学説明会で相談することをお勧めします。 なお、国税審議会の公表した認定基準上、指導教員の専門分野そのものは認定の屡判基準とはされていません。ただし、「明らかに専門分野が異なる指導教員が証明書を作成している場合など、指導内容に痕義がある場合」は別途説明資料の提出を求めることがあります(国税庁Q&A問16)。租税法の専門教員に指導を受けることが非常に重要です。
東洋大学大学院で税法免除を目指す方へ
当サイトを運営する教員は東洋大学大学院法学研究科に所属しており、税法を専門に研究・指導しています。研究計画書の作成や大学院入試に関するご相談は、お問い合わせフォームからお気軽にどうぞ。
また、関連する著書として以下もご参照ください。
