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法人が所有する不動産を、退任した元役員に「簿価」で譲渡する際、税務上のリスクを正しく把握できていますか?国税不服審判所裁決令和6年4月19日(名裁(諸)令5-26)では、元役員への土地譲渡による差額利益が「給与所得」と認定され、源泉所得税の追徴に加え不納付加算税も課されるという厳しい判断が下されました。本記事では、実務担当者が知っておくべき「実質的な役員性」と「経済的利益」の判断基準を解説します。

ケース概要&争点・結論

  • 裁決日:令和6年4月19日(名裁(諸)令5-26)国税不服審判所
  • 事案:法人が退任した元役員に土地を簿価で譲渡、差額が「経済的利益」として給与認定、源泉所得税追徴および不納付加算税賦課
  • 争点:退任後も経営に関与した元役員の「実質的な役員性」が認められるか、および時価と簿価の差額が「経済的利益」に当たるか
  • 結論:元役員の実質的役員性を認定、差額が給与所得と判断され審査請求棄却

ポイント:

  • 形式的な退任は通用しない? 取締役を辞任していても、経営に関与していれば「役員等」とみなされる可能性あり。
  • 「簿価譲渡」の落とし穴。 客観的な時価(交換価値)との差額は「経済的利益」として給与認定の対象になる可能性あり。
  • 不納付加算税の回避は困難。 「予期していなかった」という主張が「税法の不知」とされ、不能加算税の回避は困難に。

不動産の低額譲渡は、譲受人が役員や従業員である場合、差額が給与とみなされ源泉徴収義務が発生します。「元役員だから大丈夫」という予断がいかに危険か、最新の裁決から学びましょう。

本裁決の詳細は以下の記事をご確認ください。

審判所の判断ポイント

  1. 「実質的な役員性」:形式的な退任後も経営に関与する者は所得税法上の「役員等」に当たり得る。裁決は退任後の経営関与を実質的に調査し「役員」と認定
  2. 経済的利益の給与認定:時価と簿価の差額は「経済的利益」として源泉所得税の徴収義務が発生する。法人側の誤認では回避できない
  3. 不納付加算税:「予期していなかった」という主張が「税法の不知」とされ回避不能。源泉徴収義務の重大なリスクを示す

実務担当者のための注意点

  • 元役員への不動産譲渡前に「実質的な役員性」の有無を必ず確認する。退任後も経営に関与していないかを文書等で証明する
  • 不動産譲渡の際は時価評価を専門家に依頼する。簿価譲渡を計画する場合は税理士に事前相談し、源泉徴収義務の要否を確認する
  • 「退任したから大丈夫」という予断は税務リスクを招く。継続的な経営指導や意思決定に関与していれば税務上の役員とみなされる
Q1. 元役員への不動産の低額譲渡が給与認定される条件は何ですか?
退任後も経営に関与している元役員が「実質的な役員性」を持つと認定された場合、時価と簿価の差額が「経済的利益」として給与認定され源泉徴収義務が発生します。
Q2. 退任後の経営関与で「実質的役員」とみなされる可能性はありますか?
令和6年4月19日裁決では、退任後も経営に継続的に引き続き関与していた元役員に実質的役員性が認められました。形式的な退任だけでは不十分です。
Q3. 不納付加算税を回避するにはどうすればよいですか?
「予期していなかった」という主張は「税法の不知」とされ、不納付加算税の回避は困難です。事前に税理士に相談し、源泉徴収義務の有無を確認することが重要です。