以下、国税庁「個別情報収集の事務実施要領」の紹介です。



1 目的
調査の必要性が高いものの資料情報等の不足により調査に至っていない事案については、調査に向けて個別に資料情報の収集・蓄積等を行う必要があり、調査事務を充実させる観点から、原則として、課税総括課等の指示に基づき、資料調査課等から返戻された事案等の個別管理事案に係る情報収集(以下「個別情報収集」という。)を実施することとし、個別情報収集を適正かつ円滑に実施するために、具体的な実施手続を定めたものである。


2 基本方針
個別情報収集を行う部署(以下「個別情報収集担当」という。)は、資料調査課等から署へ返戻された事案であって、署調査部門では個別の情報収集及び蓄積等が困難と認められる事案について、課税総括課等の指示(東京局及び大阪局においては、統括国税実査官(資料情報担当)と事前に調整を行う。(以下同じ))を受けて、個別管理事案として調査に向けた深度ある情報収集等を行う。
なお、課税総括課等の指示を受けた事案以外でも、署において個別情報収集を行うべき事案がある場合には、署の実情を踏まえ、課税総括課等と協議の上、個別情報収集を行うこととして差し支えない。


3 運営体制
個別管理事案に係る個別情報収集は、原則として、開発調査部門が行う。


4 指揮命令
署における個別情報収集担当に対する総括的な指揮・命令は、個別情報収集担当配慨署の署長が行うが、各個別管理事案に係る指揮・命令は、事案所轄署の署長が行う。
また、個別情報収集の指導・監督は、課税総括課等が行う。


5 署個別管理事案に係る個別情報収集
(1) 個別情報収集を行う事案
個別情報収集担当は、次の事案について、個別情報収集を行う。
イ課税総括課等の指示に基づく事案
資料調査課等から署へ返戻される事案などで、課税上の問題が伏在すると想定されるが直ちに調査を実施するまでには至らない事案のうち、特に注視する必要があると認められる事案を個別に管理し、調査に向けた情報の付加、分析・検討を要する事案について、課税総括課等から個別情報収集担当に対して、個別情報収集を行うよう指示があった事案

ロ上記以外の事案
調査の必要性が高いものの、資料情報等の不足により調査選定に至らない、又は特定の納税者のみの調査に止まってしまうなど深度ある調査が期待できないことが懸念される事案などについて、課税総括課等、主管課及び事案所轄署と協議の上、課税総括課等が個別情報収集をすべきと判断した事案


(2) 個別管理事案名簿の作成等
イ個別管理事案名簿(署管理)の作成等
個別情報収集担当は、個別情報収集を行う事案について「個別管理事案名簿(署管理)」(様式1) を作成し、個別情報収集担当設置署の署長の決裁を受けた後、その写しを課税総括課等及び事案所轄署の署長に送付する。
ロ事案所轄署の処理
「個別管理事案名簿」の送付を受けた事案所轄署の署長は、関係部門の第一統括官を通じて、該当事案に係る個人調査ファイル又は法人税歴表等に「個別情報収集担当管理」と表示した上で、適切に管理させる。
また、関係部門の第一統括官は、当該名簿に登載された事案に係る申告書等が提出された場合及び重要資料、資金等に関する資料及び部外情報等の情報を新たに把握した場合には、速やかに個別情報収集担当へ写しを送付する。


(3) 個別情報収集の実施
個別情報収集担当は、個別管理事案に関して、必要に応じて他の開発調査部門等と連携し、実地調査に向けた資料情報の収集・蓄積・検討を行う。
また、個別管理事案について、課税資料やマスコミ等の各種情報などを用いて多角的な分析を継続して行う。
(4) 個別情報収集の結果の報告
個別情報収集担当は、個別管理事案の分析・情報の集積の結果等により、実地調査に着手することが可能と判断した場合、又は調査の必要性が低いと判断した場合には、当該情報の内容等を記載した「個別情報収集報告書」(様式2) を作成し、個別情報収集担当設置署の署長の決裁を受ける。
署長の決裁を了した「個別情報収集報告書」は、収集した情報と併せて課税総括課等へ送付するとともに、「個別管理事案名簿(署管理)」の処理欄にその旨を記載する。
なお、「個別管理事案名簿(署管理)」は、事後の分析に活用するため、適切に保管する。

(5) 個別管理事案の指定の解除
イ指定の解除
課税総括課等は、上記(4)の「個別情報収集報告書」を検討し、当該個別管理事案が、実地調査に着手することが可能、又は調査の必要性が低い、若しくはその他状況の変化等により、個別情報収集担当で管理を行う必要がないと判断した場合には、個別情報収集担当へその旨を連絡する。
課税総括課等から検討結果の連絡を受けた個別情報収集担当は、課税総括課等の検討結果を設置署の署長に報告し、指定の解除を行う。
ロ指定の解除の通知
個別情報収集担当は、指定の解除を行った場合は、「個別管理事案名簿(署管理)」の参考欄に「管理事案解除」と記載し、その写しを課税総括課等及び事案所轄署の署長へ送付するとともに、当該事案に係る情報については事案所轄署へ引き継ぐ。
ハ事案所轄署の処理
個別情報収集担当から管理の解除の通知を受けた事案所轄署の署長は、関係部門の第一統括官に指示して、該当事案に係る個人調査ファイル又は法人税歴表等に解除の表示を行う。


6 局個別管理事案に係る個別情報収集
(1) 個別情報収集の指示
課税総括課等は、必要に応じて課税総括課等で管理している個別管理事案(以下「局個別管理事案」という。)について、資金等に関する資料などの情報収集を個別情報収集担当に指示することができる。
(2) 個別管理事案名簿の作成等
個別情報収集担当は、課税総括課等から個別情報収集の指示を受けた場合、「個別管理事案名簿(局管理)」(様式1) を作成し、個別情報収集担当設置署の署長の決裁を受けた後、その写しを課税総括課等に送付する。
(3) 個別情報収集の実施
個別情報収集担当は、課税総括課等から指示があった事案について、速やかに情報の収集を行う。
(4) 個別情報収集の結果の報告
個別侑報収集担当は、局個別管理事案に係る個別情報収集の状況を定期的に課税総括課等へ連絡する。
個別情報収集担当は、課税総括課等から指示を受けた個別情報収集が終了した場合には、当該情報の内容等を記載した「個別情報収集報告書」を作成し、個別情報収集担当設置署の署長の決裁を受ける。
署長の決裁を了した「個別情報収集報告書」は、収集した情報と併せて課税総括課等へ送付するとともに、「個別管理事案名簿(局管理)」の処理欄にその旨を記載する。
なお、「個別管理事案名簿(署管理)」は、事後の分析に活用するため、適切に保管する。
(5) 個別管理事案に係る管理の解除
課税総括課等は、局個別管理事案について、十分な情報収集が達成できたなどの理由から個別情報収集を終了させる場合には、個別情報収集担当に対して管理の解除を連絡する。
管理の解除の連絡を受けた個別情報収集担当は、課税総括課等の連絡内容を設置署の署長に報告し、「個別管理事案名簿(局管理)」の処理欄に解除の表示を行う。


7 実地訓査に向けた取組
課税総括課等及び実地調査の実施部署は、個別情報収集担当が収集・蓄積した情報が実地調査に確実に繋がるよう、個別情報収集が終了した事案の実地調査に向けた取組の実施に当たって、以下の事項に留意する。
(1) 課税総括課等
課税総括課等は、主管課及び個別情報収集担当と協議し、個別情報収集担当から提出された「個別情報収集報告書」及び収集した情報等に基づいて事案の内容を検討した結果、実地調査に着手すべきと判断した場合には、事案の規模や内容に応じ、調査担当部署(資料調査課等、総合調査部門、署調査部門)や人員配置などの調査体制、調査時期及び調査方法等を検討し、検討結果を関係部署へ連絡する。
署調査部門において実地調査をすべきと判断された事案について、課税総括課等又は主管課は、検討の内容を事案所轄署の署長に連絡し、実地調査に向けた取組を指示する。
なお、個別情報収集において、情報が不足していると認められる場合には、個別情報収集担当に追加の個別情報収集の指示を行う。


(2) 実地調査の実施部署
課税総括課等又は主管課から調査に向けた取組の指示を受けた事案所轄署の署長は、特官又は担当統括官(以下「実施部署」という。)に対して、当該事案を実地調査事案として選定し準備調査等に着手するよう指示を行う。
実地調査の実施部署は、実地調査に着手する前に、個別情報収集担当に出席を要請して着手検討会を開催するなどし、調査内容や役割分担等について各担当者の認識を共有させるとともに、収集した情報に関して活用方法等を十分に検討する。


8 個別情報収集の分析・評価
(1) 調査事績の連絡
課税総括課等は、個別管理事案の実地調査終了後、実地調査の実施部署から調査決議書等の写しを送付させるなどして調査事績を集約して「個別管理事案事績表」(様式3) を作成し、個別情報収集担当へ連絡する。
(2) 個別情報収集の分析・評価
課税総括課等及び個別情報収集担当は、個別情報収集の内容及び調査事績について、継続的に分析・検討を行い、じ後における個別情報収集及び有効な調査手法の開発に努め、個別情報収集の分析・評価を行う。