M&Aの「引き留め金」は一時所得か雑所得か?
M&A(企業買収)の際、キーマンの離職を防ぐために支払われる「リテンション・ペイメント(引き留めボーナス)」。この所得区分を巡り、国税不服審判所(令和6年4月24日裁決)が重要な判断を下しました。
事案の概要:2年間の「忠誠」への報酬
本件は、買収された企業の代表取締役が、取引先から「2年間の忠誠」を条件に一時金を受領した事例です。請求人(代表取締役)は、「従前通り働くことを期待されただけであり、役務の対価ではない」として、税負担の軽い一時所得で申告しました。しかし、原処分庁はこれを雑所得と判断し、更正処分を行いました。
審判所の判断:「地位への見返り」は対価性あり
審判所は、一時所得から除外される「役務の対価」の範囲を広く定義しました。
- 具体的な作業への報酬だけでなく、「何らかの義務を伴う地位に就いていること」への見返りも含まれる。
- 本件の金員は、代表取締役に留任し、取引関係を維持する義務を負う「契約上の地位」に対する対価である。
結果として、偶発的な所得とは認められず、雑所得に該当すると結論付けられました。
実務への影響
M&A実務において、契約書上の「忠誠」や「継続勤務」といった文言が所得区分を左右し、多額の追徴課税を招くリスクが浮き彫りとなりました。契約スキームの策定には、これまで以上に慎重な検討が求められます。
本裁決の詳細は以下の記事をご確認ください。
