近年のインバウンド需要の高まりに伴い、免税店(輸出物品販売場)に対する税務調査が非常に厳格化しています。今回紹介するのは、令和6年7月24日に国税不服審判所が出された裁決事例です。
この事案では、時計の販売・買取を行う事業者が、「非居住者への免税販売」と「中古時計の仕入税額控除」の双方を否認され、巨額の更正処分を受けました。形式的な書類を揃えていたにもかかわらず、なぜ否認されたのか。実務担当者が注視すべきポイントを整理します。
- 免税販売の否認:別人パスポートと居住者判定の落とし穴
免税販売が否認された理由は、大きく分けて2点あります。
本人確認の不備(別人パスポート) 購入者が提示したパスポートが、実際にはその場にいない別人のものでした。審判所は、免税の要件である「その所持する旅券等の提示」とは、「購入者自身のパスポート」であることを指すとしました。たとえパスポートの写しを保存していても、実態として本人のものでなければ免税は認められません。
居住者判定のミス もう一人の購入者は外国人でしたが、日本国内の事業所に勤務し6か月以上経過している夫と同居し、その生計費で生活していました。外為法の基準では、このようなケースでは購入者自身も「居住者」とみなされます。免税はあくまで「非居住者」が対象であるため、この譲渡も否認されました。
- 仕入税額控除の否認:名義貸しによる「帳簿の真実性」
買取業務において、事業者は氏名・住所が記載された買取申込書や本人確認書類を保存していました。しかし、調査により以下の事実が判明しました。
名義貸しの実態:申込者は他人から依頼され、アルバイトとして署名しただけであり、真実の売却主ではなかった。
不自然な取引:短期間に多額・多量の高級時計を売却しており、本人の収入状況とも整合しなかった。
審判所は、「帳簿等には真実の仕入先の氏名を記載すべき」と判断。名義貸しによる書類は「真実の記載」とは言えず、消費税法第30条第7項に規定する帳簿等の保存要件を満たさないとして、仕入税額控除を全面的に否認しました。
まとめ:実務担当者への教訓
今回の裁決は、「書類が揃っていれば良い」という形式主義が通用しないことを強く示しています。
対面での本人確認の徹底:パスポート写真と来客が一致するか、厳格な確認が必要です。
買取時の不自然な取引への警戒:名義貸しが疑われる高額・頻回な取引は、仕入税額控除否認の直撃を受けます。
税務リスクを回避するためには、現場でのオペレーションの見直しと、最新の裁決事例に基づいた社内教育が急務と言えるでしょう。
審判所の判断の詳細は以下の記事を確認してください。
