本裁決は、会社役員が副業として行ったM&A仲介業務の所得区分が争点となりました。請求人は、多数の案件管理や資料作成を行い、活動に継続性・反復性があったとして「事業所得」を主張し、多額の赤字を給与所得と損益通算しました。しかし、審判所はこれに対し、以下の理由から事業に該当しないと判断し、「雑所得」への振替を支持しました。
最大のポイントは、事業所得の判断において「安定した収益が得られる可能性」を重視した点です。本件では、(1)数年にわたり収入が一切なく、多額の経費のみが発生し続けていたこと、(2)活動資金が自身の給与収入に依存し、経済的な自立性に欠けていたこと、(3)案件検討は行っていたものの、実際の成約や収益獲得に直結する具体的・客観的な行動が希薄であったことが指摘されました。
審判所は、一定の労力を費やしていても「社会的客観性をもって事業と認められる実態はない」と判示しました。この裁決は、特に高額所得者が行う副業において、単なる活動実績だけでなく、営利性や収益の実現可能性が厳格に問われることを示しています。損益通算による節税を検討する実務において、非常に重要な指針となる事例です。
