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「5棟10室」以下でも事業と言える?建物取壊し損失の意外な結末

ケース概要&争点・結論

  • 裁決日:令和6年2月8日(国税不服審判所)
  • 事案:個人で動物病院を営む獣医師が法人化にともない自己所有建物を法人に賃貸。建替で旧建物を取り壊し、多額の除却損を計上
  • 争点:不動産賃貸が「事業」(除却損全額差引可)か「業務」(不動産所得の範囲内に限定)か
  • 結論:貸付の目的が利益稼得でなく形式的と判断。「社会通念上」事業と認めず除却損全額は経費不可、審査請求棄却

不動産オーナーにとって、古い建物を取り壊した際の「資産損失(除却損)」を全額経費にできるかどうかは、税負担を大きく左右する重要事項です。

通常、不動産貸付けが「事業」と認められれば損失の全額を算入できますが、事業外(業務)と見なされると、その年の不動産所得の金額までしか経費に算入できません。

今回は、令和6年2月8日に国税不服審判所が出した、**「動物病院の法人化に伴う貸付け」**に関する最新の裁決事例をご紹介します。

事例のポイント:なぜ「事業」と認められなかったのか?

請求人は個人で動物病院を営んでいましたが、社会保険加入のために法人化。自身が所有する建物をその法人に貸し付けていました。その後、建替えのために旧建物を取り壊し、多額の除却損を計上しましたが、審判所はこれを「事業」とは認めませんでした。

判断の決め手となったのは、以下の3点です。

  1. 目的の非営利性:貸付けの目的が利益稼得ではなく、「個人事業を法人へ引き継ぐため」の形式的なものと判断された。
  2. リスクと労力の欠如:借入金は病院経営のためのものであり、貸付業としてのリスクではない。また、管理労力も極めて限定的であった。
  3. 社会的な地位:請求人の主たる収入は獣医師としての役員報酬であり、不動産貸付業で生計を立てている実態がなかった。

裁決の詳細は以下の記事をご確認ください。

審判所の判断:3つの決め手

  1. 目的の非営利性:貸付の目的が「個人事業を法人へ引き継ぐため」の形式的なもので、利益稼得のための事業に当たらないと判断
  2. リスクと労力の欠如:借入金は病院経営のためのもので貸付業としてのリスクではなく、管理労力も極めて限定的であった
  3. 社会的な地位:請求人の主たる収入は獣医師としての役員報酬であり、不動産賃貸業で生計を立てている実態はなかった

不動産賃貸業の「事業」認定に必要な実務上の注意点

  • 「社会通念上」の事業認定には、利益稼得を目的とした独立した貸付業としての実態を具体的に証明する必要がある
  • 専ら外部に対する貸付でなく、自己の法人への賃貸は利益稼得目的が小さいと判断されるリスクが高い
  • 不動産賃貸における除却損の税務処理に不安があれば事前に税理士に相談し「事業」として認められるか確認する
Q1. 不動産賃貸が「事業」と「業務」で差引きできる除却損の金額はどう違いますか?
不動産賃貸が「事業」と認められれば除却損の全額を差引できますが、「業務」と判定されるとその年の不動産所得の金額の範囲内に限定されます。
Q2. 社会通念上の「事業」と認められる貸付業の定義は何ですか?
令和6年2月8日裁決では、利益稼得を目的とする独立した貸付業としての実態があり、社会通念上事業と認められることが必要とされました。
Q3. 自己の法人への建物賃貸は「事業」と認められますか?
本件では自己の法人への賃貸は利益稼得目的が弱く形式的と判断され「社会通念上」事業と認められませんでした。独立した貸付業としての実態が求められます。